蜜色トライアングル ~Edges of precise jade

3.お医者様の診察




翌週の水曜。


木葉は午前の診療を終え、診療室の棚を掃除していた。

梅雨の時期を迎え、埃が湿気で棚に張り付いている。

この時期は雑菌も多いので、特に念入りに掃除しなければならない。


今日は清一も圭斗も午後から不在で、午後は休診となる。

13時を回り、凛花も他の事務員やナースも帰ったらしい。


と、後ろの扉がガラっと開いたのに気付き、木葉は振り向いた。


「圭ちゃん」


白衣を着た圭斗の姿に木葉は目を丸くした。

あれから、木葉と圭斗は二人きりでは会っていない。

週末、圭斗は出張で不在で、平日は診療で忙しく二人で話す時間はなかった。


「あれ、圭ちゃん。午後から出かけるんじゃないの?」

「ああ、15時過ぎに出る。荷物をまとめておかないとね」


圭斗は黒いビジネスバッグを机に置き、机の上の書類を手際よく詰めはじめる。

白衣の下にワイシャツとスラックス、ネクタイを締めたその姿はまさに『医者』という感じだ。

恋人の欲目というわけではないが、……問答無用にカッコいい。

思わずぼーっと見つめていた木葉を、圭斗が振り返った。


「……どうしたの、木葉。顔が赤いよ?」

「え?」


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