蜜色トライアングル ~Edges of precise jade


その後。


木葉を家まで送った圭斗は、冬青も由弦もいないことを確認し木葉を風呂場まで運んだ。

服を脱がせて丹念にシャワーで洗い、部屋着を着せる。

その後二階の木葉の部屋に運び、ベッドに横たえ、布団をかけた。


木葉は人形のように大人しく圭斗の手に身を委ねていた。

身体に全く力が入らず、立つことすらままならない。

木葉はこれまでにない世界を覗いてしまったような気がした。


『まぁこれだけじゃないけど、いろいろあるわけよ。各々の嗜好ってのがね』


いつか聞いた凛花の言葉が頭に浮かぶ。

――――嗜好。


ひょっとして、これがその嗜好というやつなのだろうか?

そんな世界があることを木葉は想像すらしていなかった。


「じゃあおれ、そろそろ行くから。ゆっくり休んで?」


圭斗は木葉の唇に優しい口づけを落とし、部屋を出て行く。

その背を木葉はぼんやりと眺めていた。


まだ自分は圭斗のことを何もわかっていないのかもしれない。

優しくて、強引で……そして……。


「……」


思い出すと顔が赤くなる。

木葉は自分の身を抱きしめ、布団の中に顔をうずめた。


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