蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



木葉は傍らの圭斗を見上げた。

圭斗は深緑の浴衣を身に着け、茶色の帯を締めている。

落ち着いた色合いは『大人の浴衣』という感じで、とても似合っている。

それに比べ自分は、中学の頃の浴衣なのでまるで子供だ。

他になかったので仕方がないが……。

来年はもっと大人っぽい浴衣を用意しようと木葉は思った。


「圭ちゃん、あれ!」


木葉は林檎飴を指差した。

昔から木葉はお祭りに行くと林檎飴を買うことにしている。

他のは家でも作ろうと思えば作れるが、林檎をまるごと飴につけるというのはなかなかできないからだ。


木葉はバッグから財布を取り出そうとした。

が、浴衣に合わせた和布のバッグはいつもと使い勝手が違い、なかなか出てこない。


と、そのとき。

木葉の脇から、圭斗の腕がすっと伸びた。

その手には紙幣がある。


「ひとつください」

「あいよっ」


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