蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
いずれは実業家にでもなるのかもね、と圭斗は続ける。
――――まるで想像がつかない。
しかし自分の知らないところで、いろいろ事態は変わっているらしい。
二人は駅から歩いて10分ほどのところにあるマンションの内見に来た。
係員から説明を受け、部屋を確認する。
「こちらがリビングです。南向きで明るいですよー」
木葉は実家以外のところに住んだことがないため、内見に来るのは初めてだ。
中に入った木葉は、明るく広いリビングに目を輝かせた。
キッチンの向こうには木製のダイニングテーブルが置かれている。
朝、カフェオレを作る圭斗の隣で、自分はトーストを焼いて……。
つい、そんな光景を想像してしまう。
木葉はぽっと顔を赤らめた。
そんな木葉に、係員が笑いながら声をかける。
「その扉の向こうがベランダです。都内の景色が見渡せますよ」
「わーっ、キレイですね!」
感嘆の声を上げる木葉の後ろで、圭斗は建具や収納スペースの広さ、水回りの導線を確認していた。
経験者は見るポイントが違うらしい。
圭斗は中をチェックしながら、別の係員に一つ一つ確認していく。
木葉はそんな圭斗をとても頼もしく思いながら見つめていた。