蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
『圭斗は将来、お父さんやお爺ちゃんと同じお医者さんになって、この病院を継ぐのよ』
母の言葉は幼い圭斗の心を呪縛のように縛り付けていた。
逃げたい……、しかし逃げる術もない。
圭斗は鬱憤を叩きつけるようにひたすら画用紙に鉛筆を走らせた。
『……あはは……』
後ろから木葉の楽しそうな声がする。
後ろには小川があり、木葉はどうやらそこで遊んでいるようだ。
絵に気を取られていた圭斗は木葉のことを忘れ絵に没頭した。
――――30分後。
ぽつりと雨粒が画用紙の端に落ちた。
圭斗ははっと顔を上げ、辺りを見回した。
『……木葉?』
いつのまにか木葉の声が聞こえなくなっている。
圭斗は慌てて立ち上がり、小川の方へと行った。
その川の真ん中で、木葉は座り込みひっくひっくと泣いている。
圭斗はとっさに叫んだ。