蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
「……私、まだ実感ないの。圭ちゃんのこと、好きだけど……」
「だけど?」
「ねぇ凛花ちゃん。……『好き』って何?」
木葉の言葉に、凛花はぴしっと固まった。
ケーキを刺したフォークが空中で止まる。
「……ちょっとあんた、本気で言ってるの?」
「本気だよ、凛花ちゃん」
「こりゃ圭兄も大変だわ。……ていうか外堀の前に埋めるべき部分があるでしょーに……」
凛花の呟きは語尾が掠れ、あまり聞き取れない。
がくりと肩を落とした凛花を見、木葉も力なく項垂れた。
自分の気持ちすら分からない自分が、『大人』の圭斗と肩を並べる、など……。
……今でもまだ、自分の置かれた状況が信じられない。
――――あの夜。
自分は圭斗に導かれ、大人の階段を上った。
……はずだ。
しかし現実は大人になっても何かを悟るわけでもなく、何かを理解できるようになるわけでもない。
むしろ混乱が深まり、わからないものが増える。
圭斗は自分を好きだと言ったが、なぜ自分なのかすらわからない。
子供の自分が圭斗と釣り合うとはとても思えない。