蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



『タオルを持ってきてくれ! あと毛布だ』

『わかりました!』


看護師達は父の指示で機敏に動き始める。

父は木葉の瞼を指で押し上げ、瞳孔を確認した。

ずぶ濡れの上着を手早く脱がせ、聴診器を胸に当てる。


父は心音を確認した後、看護師に点滴の準備をするよう指示した。

その間にも他の看護師達が木葉の体を拭き、毛布で包み、体温計を脇に差し込む。


『…………』


圭斗はその光景をただ呆然と眺めていた。

――――木葉のために何をしてやればよいのか、わからない。


自分は、無力だ……。


俯き、項垂れていた圭斗に父が厳しい声を投げる。


『圭斗。一体何があった?』

『……』

『木葉を見ていなかったのか?』


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