蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
木葉は圭斗が注いでくれたシャンパンに指を伸ばした。
圭斗は運転するため酒は飲まない。
が、木葉には口に合いそうなお酒を選んでくれる。
そういう気遣いや優しさを他の彼女にも見せていたと思うと、胸の奥が黒いものに覆われる。
――――大人の彼女。
彼女たちとはゲームセンターになど行かなかっただろう。
圭斗は子供の自分に合わせてくれたのだ。
そう思うと申し訳なく、また自分自身が情けなくなってくる。
「どうしたの、木葉?」
沈んだ様子の木葉に、圭斗が気遣わしげに声をかける。
木葉は慌てて顔を上げた。
「何でもないよ。……このパエリア、美味しいね?」
「そうだな。でもおれは、この間木葉が作ってくれた煮物の方が美味しいと思うよ?」
にっこり笑って圭斗は言う。
この間って……長野に行った時のことだろうか?
しかしあれは、有り合せの野菜で作った簡単なものだ。
木葉は軽く首を振った。