蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
「そうかなぁ。お兄ちゃんも由弦も、私の料理を美味しいって言ったことないよ?」
と、木葉が言うと。
圭斗は少し笑い、木葉の目をじっと見つめた。
「昔から食べ慣れてるから言わないだけだと思うよ。おれは羨ましいよ、あいつらが」
「……圭ちゃん……」
「ま、いずれ、お前の手料理を食べるのはおれだけになるから。それまでは我慢するよ。……ムカつくけどね?」
圭斗は悪戯っぽく笑って言う。
しかしその目は真剣で、圭斗が心からそう思っていることは明白だ。
と、兄弟の話題が出たところで木葉は背筋を正した。
「そういえば、圭ちゃん」
「ん?」
「あの……この間のホテルのことなんだけど。実はね……」
木葉はあの夜のことを思い出しながら口を開いた。
あれから一週間が経ち、冬青と由弦の件に関しては木葉の中で大分落ち着いている。
というより別の大きな問題が出現したため、兄弟の件に関しては逆に冷静に考えられるようになった感じだ。