蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
落ち着いた声音だが、その声には明らかに怒りを含んでいる。
圭斗は何も言えずただ立ち尽くしていた。
自分が木葉を見ていなかったのは、確かだ。
しかし、その時。
横たわっていた木葉が朦朧とした意識の中、乾いた唇を開いた。
掠れた声で必死に言い募る。
『……おじさん……圭ちゃんを、怒らないで……』
『木葉?』
『圭ちゃんは……悪くないの……。あたしを、助けてくれた……』
木葉はうわごとのように言う。
圭斗ははっと木葉に目を向けた。
――――川から引き揚げた時と同じ、縋るような目。
その眼は必死に父を見上げている。
圭斗はその場に凍りついたように立ち尽くした。
自分には何の力もないのに……。
ただこうして、見ているだけしかできなかったのに……。