蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



圭斗が聞くと、佐山はビシッと背筋を伸ばした。

まるで敬礼でもしそうな勢いだ。


「ハイっ。実は桐沢道場で、師兄の指導を受けておりますっ」


佐山ははきはきした声で叫ぶように言った。

木葉はハハと内心で苦笑いした。

――――圭斗と木葉でなければ、何の事だかわからないだろう。


圭斗の後ろでナースの沢井さんが怪訝そうな目を向けている。

圭斗は眼鏡の奥で少し笑い、カルテを沢井さんに差し出した。


「そうですか。がんばってくださいね。奴は厳しいかもしれませんが、間違ったことは言いません」

「えっ。先生は師兄をご存じなんですか!?」

「ええまあ。……それでは、お大事に」


にこりと圭斗は笑い、次の患者さんのカルテのチェックを始めた。

木葉は佐山に待合室に戻るよう言い、診察室の扉を閉めた。


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