蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



12時過ぎ。

午前の診療を終え、帰り支度をしていた木葉の耳に、沢井さんと春野さんの声が聞こえてきた。

どうやら事務所で昼食をとっているらしい。


『……って、そうだよね?』

『見た見た。ティファニーでしょ?』

『全くそんな感じしなかったのにね~』


何のことを話しているのかはよくわからない。

しかし次に続いた言葉に、木葉は顔を強張らせた。


『にしても若先生、木葉ちゃんみたいな子がタイプだったなんてね~』

『もっと大人の女性がタイプだと思ってたのに。なんか大人と子供って感じよね?』

『先生と生徒って感じもするよね~。デートっていうか遠足? みたいなー』


――――遠足。


木葉はガクリと肩を落とした。

やはり傍からはそう見えるのか。

と思ったその瞬間。

脇から右手をとられ、木葉は驚いて顔を上げた。

< 65 / 161 >

この作品をシェア

pagetop