蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
4.埋められていく外堀
その週の木曜。
木葉は凛花とともに桜庭病院に向かっていた。
凛花はピンクのチュニックに白いペチスカートを身に着け、ばっちり髪を巻いている。
病院では浮く格好だが、病室に花が咲いたようで他の患者から思いのほか温かい視線を向けられている。
「おじさま、お加減はいかがですか?」
「やあ凛花ちゃん、久しぶりだね。わざわざ来てくれて、すまないね」
凛花の声に父は相好を崩して笑った。
父は姪の凛花を昔から可愛がっていた。
木葉が生まれる三年前に生まれた凛花は、木葉が生まれるまで、父にとっても実の娘のような感じだったらしい。
「退院予定はいつなんですか?」
「予定では再来週なんだが……。もうちょっと経過を見ないと、なんとも言えないね」
ははと父は笑顔で言う。
「そういえば凛花ちゃん。うちの木葉と、圭斗君の件。聞いてるかい?」
「ええ、もちろん聞いてます」
「ふつつかな娘だけど、よろしく頼むよ。結婚したら木葉が凛花ちゃんの義姉ってことになるが、木葉はまだまだ子供だ。これまで通り接してくれ」