蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
2.運命の夜
23:00。
エレベーターは音もなく最上階へと上がっていく。
インペリアルタワーのエレベーターの中で、圭斗は落ち着かない様子で携帯を凝視していた。
『インペリアルタワー・ホテル42F 角部屋 from K』
差出人は木葉だが、まるでメモのようなメールだ。
圭斗は眉根を寄せた。
「……誰だ?」
木葉は普段、こんなメールは書かない。
木葉のイニシャルも『K』ではあるが、別の人物が書いたと考えるのが自然だろう。
他に考えられるのは冬青もしくは由弦だが、二人とも『桐沢』ではあるが圭斗宛てのメールなら名前で書くだろう。
というか木葉の携帯からメールしなくても自分の携帯でメールしてくるはずだ。
――――夕方。
圭斗は月曜の勤務について木葉にメールしてみたが、返事が一向に返ってこなかった。
電話をしても、繋がらない。
それから何度となく電話やメールをしてみたが、22時を過ぎても木葉からの返事がなかった。
木葉は普段、仕事関係のメールには比較的すぐに返事を返してくれる。
――――おかしい。