蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
恐らく『月刊 剣術の粋』だろう。
父は何年も前からこの雑誌を愛読している。
近年は剣術の世界にも電子化の波が押し寄せ、『果たし状をスマホで送る方法』なんていう特集が組まれていたりするが、剣の世界は今も昔も変わらない、らしい。
木葉は病室を出、待合室の隅にある購買へと向かった。
その時。
「あ……」
由弦の姿を見つけ、木葉は足を止めた。
遥の姿は見えない。
どうやらお手洗いにでも行っているようだ。
木葉が立ち尽くしていると、由弦が木葉の方へと近寄ってきた。
「来てたのか、木葉」
「あ……うん」
こうして話すのはとても久しぶりな気がする。
由弦とは血が繋がっていないと知っても、やはり由弦は由弦だ。
じっと見つめる木葉を、由弦は眩しげな目で見る。