蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
5.おとうと
「……なんか雰囲気、変わったんじゃねぇの?」
「そうかな?」
「こっち来いよ」
由弦は木葉の手を取り、待合室を出た。
木葉は突然のことに驚き手を離そうとしたが、由弦にしっかりと握られており離すことができない。
木葉は由弦に引きずられるまま外に出た。
病院の玄関の脇を抜けて小さな芝生スペースに入り、そこに置いてあった長椅子に肩を押される形で座り込む。
すかさず由弦もその隣に座った。
「圭斗との件、さっき親父から聞いた」
「……由弦……」
「結婚前提、って言ってたな」
由弦は隣に座る木葉を見、その右手に目を向けた。
――――薬指に光る、銀色の指輪。
それを見た瞬間、由弦の表情がすっと硬くなった。