蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
「ハイ、そこまで」
若い女性の声が響き、二人ははっと顔をあげた。
見ると、凛花が腕を組んでこちらを見ている。
その手には開いた携帯がある。
凛花は鋭い目で由弦を見つめ、クスリと笑った。
「兄の婚約者が貞操の危機にあるとき、妹としてはどうすればいいのかしらね?」
「……」
「とりあえず通報かしら」
ぴ、と凛花は携帯のボタンを押した。
そのまま携帯を耳にかざし、話し始める。
「あー、圭兄?」
『……』
「桜庭病院の中庭に10分以内に来て。緊急事態よ」
それだけ言い、凛花は携帯を閉じた。
そのまま携帯をスカートのポケットに突っ込み、二人の方へと歩み寄る。
何も言えない木葉の横で、由弦は舌打ちして立ち上がった。
忌々しそうな目で凛花を見据える。