蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
三章
1.嫉妬
一週間後の木曜。
木葉は病院のカウンターで凛花とともに請求処理を行っていた。
5月は患者が多かったので、請求処理のチェックにも時間がかかる。
凛花は普段は主に診察室での入力作業を行っているが、この日は請求業務が多かったため木葉とともにカウンターに座っていた。
午前の診療は終わり、あとは残務処理だけだ。
と、入り口から一人の女性が入ってきたことに気づき、二人は顔を上げた。
女性はすらっと背が高く、モデルのような体系だ。
ワンレンの長い黒髪は背に流され、口元に引かれたピンクベージュのグロスが大人の女性の色気を醸し出している。
凛花が驚いたように声を上げた。
「涼子さん」
涼子と呼ばれたその女性は、つかつかと受付の方へと歩み寄ってくる。
二重の瞳は名前の通り涼やかで、はっきり言ってかなりの美人だ。
「お久しぶり、凛花ちゃん。圭斗はいる?」
その言葉に木葉は衝撃を受けた。
――――『圭斗』。
凍りついた木葉の前を涼子は素早く横切り、診察室の扉をノックした。
コンコンという音の後に、ガラッとドアの開く音が響く。