蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



「涼子?」


圭斗の驚いたような声が上がる。

――――『涼子』。

彼女を呼び捨てにした圭斗に、木葉はさらに衝撃を受けた。

固まっている木葉に、凛花が耳打ちする。


「今の人は加納涼子さん。前に言った、圭兄の大学時代の恋人よ」

「……」

「今は港区の病院で小児科のお医者さんをしているはずだけど……。何か圭兄に用事があったのかな?」


凛花は訝しげに眉根を寄せる。

木葉は憑かれたようにじっと診察室を見つめていた。

診察室の方から圭斗と涼子が話し合う声がする。


『……改定で、経過措置が……』

『……その検査は……バイアスの……施設基準を……』


二人の間では専門的な用語が飛び交っている。

木葉には理解できない世界だ。


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