蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



「……それでもお前が、辛いというのなら」


冬青は両手で木葉の頬を包んだ。

怜悧な瞳が正面から木葉を見据える。

凄みすら感じるその視線に、木葉は息をのんだ。


「俺が未来を変えてやる。お前が泣くことのないように」

「……」

「だがその場合は、一生圭斗とは会えないと思え。お前の涙の原因を、俺は徹底的に排除する」


冬青の言葉に、木葉はぴしりと固まった。

……冗談?

と思ったが、兄の表情を見るとそうでもないらしい。


「……お兄ちゃん……」

「どうする? 選ぶのはお前だ」


兄は静かな声で続ける。

その声はいつものように冷静だ。


木葉は少し笑い、涙をぬぐった。


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