蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
唖然とする木葉の前で兄は手早くメールを打った。
木葉が止める間もなく、ピッと送信ボタンを押す。
冬青はパタンと携帯を閉じ、木葉に向き直った。
「お前は部屋に戻って寝ていろ」
「……」
「後で朝食を運んでやる。……さあ行け。10秒以内だ」
まるでここが道場かのように兄は言う。
木葉はフラフラした足で踵を返した。
こういうときは素直に兄の言葉に従った方がいい。
言うことを聞かないと、兄に担がれて強制送還するはめになるだろう。
それに今日は病院もさほど忙しくはないはずだ。
木葉が休んでもさほど業務に影響はないだろう。
「……ありがとう、お兄ちゃん」
木葉は言い、ふらふらと二階に戻っていった。
テーブルに携帯を忘れたことに気づかないまま……。