蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



<side.圭斗>



夕刻。

圭斗は診療室で本日最後の患者を診察していた。


「……ではクラピット錠を七日分処方しておきます。また一週間後に来院してください」

「わかりました。ありがとうございました」


初老のご婦人は頭を下げて診察室を出ていく。

圭斗はにこりと笑ってその患者が診察室を出るのを見送った。

……そして、扉が閉まった後。


圭斗は机の端に置いてあった携帯を手に取り、開いた。

――――まだ、木葉からの連絡はない。


「……っ」


圭斗は荒々しい手つきで携帯を閉じた。

昨日の夜も木葉から連絡はなかった。

心配ではあったが、寝てしまったのだろうと思い今朝まで待った。

……が。


「なぜ、冬青が……」


今朝届いた、冬青からのメール……。

『木葉は体調不良で今日は休む』。

冬青らしい非常に簡潔なメールだ。


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