蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



圭斗は悪い考えを追い払うように首を振った。

しかし一度思ったことはなかなか頭から抜けない。


圭斗は一週間前の桜庭病院でのことを思い出した。

――――駆け付けた時、由弦はいなかった。

あれから木葉に何があったのか聞こうとしたが、木葉は何も言わなかった。

しかしその表情から、由弦と只ならぬことがあったことを圭斗は察した。


自分に言えない、何か――――。


凛花にも確認したが『由弦が木葉に縋りついてた』としか言わなかった。

しかしそれだけなら、木葉は自分に隠したりはしないだろう。


「……っ」


木葉に聞きたい。

あの時、一体何があったのか――――。


木葉の体の隅々まで、他の男の形跡がないか確認したい。

あの白い肌に自分のものだという印を刻みつけたい……。

しかし『何もなかった』と言い張る木葉にそんなことができるはずもない。


圭斗は白衣を脱ぎ、聴診器を机に置いた。

……会いたい。

今すぐ、木葉に会いたい。

その想いを、圭斗は止めることができなかった……。


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