お前が好きなのは俺だろ?
こんなに紳士で優しい弘也君。
きっとこんな人があたしの理想の王子様なのかもしれない……
なのになんで……
こんな時に思い浮かぶのが一ノ宮君のことなんだろ……
「ただいま……」
心なしか小さな声になりながら、そっと玄関のドアを開ける。
一ノ宮君は部屋かな……?
あたしも早く部屋に行こう。
ローファーを脱いで、静かに階段を上る。
一応……一ノ宮君に声をかけた方がいい?
いや、でもなんか声かけづらいし……
自分の部屋のドアを触ったまま、隣の部屋のドアを見つめる。
やっぱり一言くらい……
そう思い、足を隣の部屋に進めようとした瞬間―……