お前が好きなのは俺だろ?
あたしが避けるならまだしも……
でも、あの時の……
あの夜の一ノ宮君はいつもと違った。
なんて言うのか……
……凄く怖かった。
あんな一ノ宮君は初めて見た。
うぅん。もしかしたら、あれが本当の一ノ宮君なのかもしれない……
あたしが、知らないだけで……
あたしが知ってる一ノ宮君は王子様で、誰にでも優しい男の子。
でも家族になって。
そしてお兄ちゃんになった一ノ宮くんは、あたしのファーストキスを簡単に奪っちゃうような俺様で悪魔みたいな人。
でもあの夜の一ノ宮君は……
男の子でもなく……
家族でもなく……
お兄ちゃんでもなく……
――男の人だった……