あの夏の恋
■一章
□ □ □
僕は、空を見上げた。
限りなく真っ直ぐ伸びている、背の高い木々達を、しかめ面で睨みながら、歩を早める。
夏。
丁度世間は“夏休み”と言う期間にあたる。
本来ならば、プールや、海、祭りとかと言った行事がたくさんあることだろう。
僕は、違う。
元々体が弱い僕は、長時間日光に当たることもできず、両親の勧めで、この期間のみ祖母の家に居候することになったのだ。
そう、両親が言うには、体が弱い僕の“体力作り”。
さしずめ僕を祖母に預けて、両親は楽しく旅行、と言ったところだろうか。
< 1 / 35 >