あの夏の恋
時間が驚くほど早く進んでいく。
良く見ると、辺りは薄暗くなり始めていた。
「うわ、もうこんなに暗い。」
「本当だ。話しに熱中しすぎてたね」
愛ちゃんが立ち上がった。
それに合わせる様にして、僕も重たい腰を上げた。
「僕はもう、帰るね。ありがとう、楽しかったよ」
リュックを背負い直して、僕は愛ちゃんに向かって喋った。
目を見て、話せた。
そんな小さい達成感に心が躍りながら、僕は笑うことが出来た。
「明日も、良かったら私と話してくれる?」
子供みたいに笑顔を浮かべる愛ちゃん。
そんな笑顔に不意にどきりとした。
「うん、そうするよ」
精一杯の笑顔を浮かべて、愛ちゃんに手を振る。
心臓がまだどきどきしていた。
森のじっとりとした暑さが体に纏わり付く。
でも、そんなのも気にしないくらい、僕は心が躍っていた。