あの夏の恋










□ □ □



「えぇ、あんたあんな山も登れなかったのかい」


祖母は茶碗を片手に、皺だらけの顔を緩ませてそう言った。



「うん。休憩してたら時間が無くなったんだ」

「全く、あんたは本当に貧弱だねぇ。あの山はここいらで一番緩い山じゃないかい」

「いい山だとは思うよ。木陰が大きくて、涼しい。」


目の前にご飯が置かれる。

祖母特製の肉じゃがと、味噌汁。
空腹を誘ういい匂いに、お腹が鳴った。



「いただきます」

「おお、ようさん食べろよ」


祖母は優しく、笑いかけてくれた。



< 11 / 35 >

この作品をシェア

pagetop