あの夏の恋
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「えぇ、あんたあんな山も登れなかったのかい」
祖母は茶碗を片手に、皺だらけの顔を緩ませてそう言った。
「うん。休憩してたら時間が無くなったんだ」
「全く、あんたは本当に貧弱だねぇ。あの山はここいらで一番緩い山じゃないかい」
「いい山だとは思うよ。木陰が大きくて、涼しい。」
目の前にご飯が置かれる。
祖母特製の肉じゃがと、味噌汁。
空腹を誘ういい匂いに、お腹が鳴った。
「いただきます」
「おお、ようさん食べろよ」
祖母は優しく、笑いかけてくれた。