あの夏の恋
湿った土壌の匂いが、僕の冷静さを取り戻す。
愛ちゃんのセーラー服のリボンが風で揺れた。
「・・・おばあちゃんの笑顔って、好き?」
ふと、そんなしょうも無い事を聞いていた。
あぁ、自分は昨日のことを気にしていたのか。
「ふ、何それ。おばあちゃんの笑顔?好きだよ。落ち着くもんね」
愛ちゃんは少し笑って、また僕に視線を合わせた。
心臓がどきりと高鳴る。
「おばあちゃんって、何でも私を許してくれそうな、そんな優しい顔で笑うよね。
やっぱり怒ると怖いけど」
「うん、優しそうだけど、怒ると怖いもんだよね、おばあちゃんって」
しょうもない話に付き合ってくれる。
それで、しょうもない話に付き合う。
この時間が、いつの間にか楽しくて仕方なかった。