あの夏の恋
「昨日、山の中で女の子に会ったんだ」
「あぁ、そうなのか」
「さっきの、愛ちゃんって言う子なんだ」
祖母の表情が変わった。
でも、すぐに元の優しい顔になって、僕の背中を擦ってくれた。
「きっと、愛ちゃんもそこが好きだったんだねぇ」
信じられない。
「幽霊だった、ってこと?」
「どうだろうねぇ。でも、夏はどうだったんだい?その子を、怖いと思ったのかい?」
祖母の口調に乗せられて、つい、本音が零れた。
「好き、だったんだ」
祖母のあの驚いた表情を僕は一生忘れないだろう。
そうか、そうか、全てが繋がった。
「愛ちゃん・・・・・・・」
夏の夜のじっとりした風が、部屋の中を包んだ。