あの夏の恋
「愛ちゃん。
愛ちゃんは好かれる人間になりたい、って言ったよね。」
「うん。誰かの憧れになるような、そんな人になりたかったの」
ぐ、と喉から込み上げてくる熱い感情を、押し殺す事無く、僕はさらけることにした。
「愛ちゃん、短い間だったけど、僕は愛ちゃんのことが大好きだったよ」
精一杯、蝉に負けないくらいの大きい声で、笑顔で、そう言った。
愛ちゃんは大きい目を見開いて、そして笑った。
「私も、夏くんのことが好きになった。でも、好きになるたび、苦しくなってたんだ。
もう、二度と会えないのに、好きになっていいのかって」
愛ちゃんは照れ臭そうに笑う。
僕も、少し顔が熱くなった気がした。