あの夏の恋
「今まで黙ってて、ごめんね。
私、死んでるんだ。ここら辺の人間って言うのも、全部嘘。
最後まで夏くんを騙してた、最低な人間なんだよ」
愛ちゃんは、もう泣きそうな顔でそう言う。
僕の目も、熱くなった。
「僕は、生きてても死んでても、きっと、愛ちゃんを好きになってたんだと思う。
愛ちゃんの、愛ちゃんのすべてを好きになったんだ」
愛ちゃんの目の前に立った。
至近距離でようやく気付いた、僕と愛ちゃんとの身長の差。
愛ちゃんは、こんなに小さかったんだ。
「自分を嫌いにならないで、って愛ちゃんが教えてくれたんだよ。最低な人間なんかじゃない」
愛ちゃんの目から、透明な涙が流れた。
「僕も、自分を嫌いになんてならない。これからは、真っ直ぐ生きてくよ。
だから愛ちゃん、愛ちゃんは愛ちゃんの道を歩いてね」
愛ちゃんの手を握った。
やっぱり、ひんやりして、冷たい。
初めて、愛ちゃんに触れた。
触れれるんだ、そう思いながら、もう一度手を握り返す。
「好きだよ、愛ちゃん」
「ありがとう、夏くん」
愛ちゃんの唇に、自分の唇を重ねた。
ひんやりとした感触が伝わって、目を開ける。