あの夏の恋
「・・・君は、ここら辺の子?」
何となく、その子が悪い人じゃないと分かって、落ち着いて聞いてみた。
静かに、その子は頷いた。
「・・・・私は、ここの近くにある高校の二年生。部活があるから山を通ったの。
珍しいね、こんな田舎に若い人がいるなんて」
少女は暑そうに汗を拭きながら、笑った。
少し、間が空いてしまう。
「・・・あ、あぁ、僕はここの人間じゃないんだ。東京から来た。祖母の家がこの近くにあるんだ」
「そうなんだ。夏休みなのにこんな田舎に来て、がっくりでしょう?」
ここ、何も無いから。
と、少女は満更でもなさそうに笑う。
「・・・いや、東京に居ても家の中に居るだけだし、田舎でもこういう所に来れたのは嬉しいよ」
「家の中に居る?どうして?」
「体が、そこまで頑丈じゃないんだ。長い時間日に当たってられない」
「じゃあ、ここに居てても大丈夫?結構、日差しがきついけど」
少女は素直に、聞いてくれた。
心臓が少し早くなった気がした。