あの夏の恋
「お兄さん、名前は?」
「・・・・高木、夏。高校三年生だよ」
「私の一個上なんだね。大学生かと思った」
彼女はふわりと笑った。
その笑顔につられて、こっちまで心が軽くなる。
「私は、河地 愛。夏くん、でいい?」
なつくん。
その単語に、心臓がどきりとした。
顔を上げると、無邪気な笑顔の、愛、ちゃん。
「・・・・・うん、いいよ」
後先考えずに、直感で口走っていた。
人見知りの僕が、こうも簡単に人と喋れるとは思っていなかった。
いつもとは違う出来事に、どうも緊張が解けない。