蜜色トライアングル ~String of origin
面倒くさいと言うわりにはかなりセンスがいい。
木葉は実家での由弦の部屋を思い出した。
あまり入ったことはないが、それなりにセンスは良かったような気もする。
木葉は驚嘆しながら部屋の中を見て回った。
リビングから続く書斎に、奥にある寝室。
広いクローゼットに、風通しの良いベランダ。
……想像していたよりはるかに良い部屋だ。
「木葉の荷物、とりあえずここに置くからな」
とんとスーツケースをリビングに置き、由弦は木葉を振り返った。
ふぅと息をついてネクタイを緩める。
その姿に木葉は思わずドキッとしてしまった。
――――なんか、これまでにない色気を感じる。
社会人になったからなのか?
それとも、自分の見る目が変わったせいなのか?
ドギマギする木葉に、由弦は笑って告げる。
「ひと段落したら、行くぞ」
「え? どこに?」
「メシ。サンタモニカにうまい店があるんだ」
由弦は言い、木葉の肩を抱いて玄関へと移動した。
その仕草もスマートで大人っぽい。
木葉は由弦の姿に、これまでになくドキドキするのを感じていた……。