蜜色トライアングル ~String of origin
4.海の向こう
海沿いのホテルの一室。
夜の海に船の灯りがポツポツと浮かんでいる。
波間にゆらゆらと揺れる灯りを眺めていると、異国に来たんだなという実感がわいてくる。
「海、か……」
この海の遥か向こうに、二人が育った日本がある。
二人が姉弟として育った懐かしい場所。
温かい思い出に溢れた場所。
昔のことを思い出すと、胸がいっぱいになる。
「……」
2年前のあの日までは、まさかこんな未来が訪れるとは夢にも思っていなかった。
二人共に傷つき、そして二人で選んだ未来。
「何見てるの?」
シャワー上がりの由弦が、窓際にいた木葉を後ろから抱きしめる。
懐かしいグリーンノートの香りが木葉を包む。
肌触りの良いバスローブの裾を寄せ、木葉は由弦の腕にそっと触れた。
「ううん。……ちょっと、風に当たりたかっただけ」
「風邪ひくよ?」