蜜色トライアングル ~String of origin



由弦の顔を見るのは久しぶりだ。

淡い茶色の髪の下の長い睫毛に覆われた瞳も、完璧なラインを描く白皙の頬も……。

昔から、変わらない。


が、その顔が奇妙に歪んでいることに木葉は気が付いた。

由弦は頬を歪め、怒りに満ちた目で木葉を見る。


「……何コレ。どういうこと?」


怒りの色はみるみる内に強くなる。

怒りと嫉妬、そしてかすかによぎる悲しみ……。

由弦の瞳の中で渦巻くそれが、木葉の心を打った。


「木葉、なに? ……そのカッコ」

「……ゆ、づ……」

「あいつとの情事のあとを、オレに見せつけたかったわけ?」


ハハと乾いた声で由弦は嗤う。

木葉は朦朧とした頭で由弦を見上げていた。


――――何かが、おかしい。

由弦の瞳も、言葉も……何かに憑かれているかのようだ。

やがて由弦は笑みを止め、ぎりっと木葉を見た。


「ふざけんなよ……」

「……由弦?」

「……いいさ、もう。滅茶苦茶にしてやる」


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