蜜色トライアングル ~String of origin



「……そんなこと、できるわけねぇ……」


苦笑し、由弦はシンクから離れた。

あれから木葉とは会っていない。

木葉の方から徹底的に避けられている。

――――無理もない。


前は由弦が木葉を避けていたが、今は逆だ。

それだけのことをしてしまったと自覚している。

それでも……。


「……会いたい……」


由弦は呻くように呟き、蛇口を止めた。

指先からぽたりと血が混じった水が落ちる。

由弦は唇を噛みしめたまま、救急箱から絆創膏を取り出して手早く指に貼った。

……何かをしていないと、とても耐えられそうになかった。


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