蜜色トライアングル ~String of origin
3.会いたい
月曜。
由弦はボディバッグを背負い、大学の構内を歩いていた。
黒いジーンズに白のTシャツ、カーキのカーディガン。
白皙の美貌とすらっとしたその姿は遠目からでも目立つ。
5月も下旬になり、校内に植えられた木々も緑の葉を伸ばしている。
由弦は木陰の下を歩きながら木葉のことを考えていた。
木葉が生まれたのは6月で、もうすぐ24になる。
新緑の美しい時期に生まれたので、父が木葉と名付けたらしい。
木葉が誕生日を迎えたら、10月生まれの由弦とはまた歳の差が広がってしまう。
焦っても、どうにもならないのに……。
「くそっ……」
と、前髪をかきあげた時。
前の方から髪の長い女が歩いてきたことに気づき、足を止めた。
遥だ。
「由弦ーっ!」
遥は笑顔を浮かべ、走り寄ってくる。
花柄のカットソーに、膝丈のシフォンスカート。
それはまさに男だらけの構内に咲いた一輪の花だ。
「由弦、今日はもう終わり? 一緒にお昼食べに行かない?」
遥は由弦の腕に自分の腕を絡め、由弦を見上げようとした。
その瞬間。
由弦の腕が、反射的に遥の手を振り払った。