蜜色トライアングル ~String of origin



「……」


木葉は俯き考え込んだまま、家に向かって歩き出した。

正午を過ぎ、初夏の強い日差しが頭上に降り注ぐ。

……と、その時。

視界に見慣れたシューズが入り、木葉は顔を上げた。


「由弦っ……!」


黒いジーンズにカーキのカーデを身に着けた由弦が目の前に立っていた。

色素の薄い茶色の髪が、初夏の日差しを受けて金色に輝く。

……道行く人が思わず振り返る、白皙の顔。

陽光の下で見る由弦の顔は、昔と変わらず美しい。


木葉は視線をそらし、由弦に背を向けようとした。

考えたわけではなく、とっさに体がそう動いた。

しかし由弦が横からその腕を掴む。


「……待てよ」

「……っ」

「何処に行く気?」


由弦は木葉の腕を引き、正面に回った。

もう片方の手で木葉の肩を掴む。

木葉は俯いたまま由弦の手から逃れようとしたが、由弦の力は強く身動き一つできない。


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