蜜色トライアングル ~String of origin
土曜日。
木葉は父の代わりに午前の剣術道場の指導をしていた。
隣では、由弦が若い女性たちに短杖術の指導をしている。
紺の袴に白い道着を着た由弦の姿は、窓から差し込む初夏の陽差しの中でとても鮮やかだ。
――――由弦には、陽差しが似合う。
色素の薄い茶色の髪と焦げ茶の瞳は日に当たるとうっすらと透け、その白皙の頬と相まって端整な彫刻のように美しい。
由弦自身は黒やカーキ、茶色といった比較的渋めの服を好むが、白い道着を着た姿は鮮やかで女性たちの視線を奪う。
「そこ、違う。もっと下だ」
由弦は短杖を片手に女性達の短杖術の型をチェックしている。
その視線は鋭く、表情は真剣だ。
由弦の指導は決して甘くはないが、それでも短杖術を習いたいという女性は後をたたない。
由弦が短杖を揮う姿は木葉も好きだ。
無駄のない機敏な動きで流れる型は、木葉にとっても参考になる。
『由弦くんの指導って、厳しいけど、丁寧よね』
『そうそう。あのそっけなさがいいの~』
『見た目は天使なのに、割とサディスティックよね。あのギャップがたまらないわー』
以前、女性達が廊下で会話するのを木葉は聞いたことがある。
その時は『相変わらず人気あるな~』としか思わなかったが。
――――サディスティック。
今ならなんとなくわかる。
……そうかもしれない。