蜜色トライアングル ~String of origin
4.流される心
6月。
誕生日を明日に控えた日の夕方。
木葉はジーンズにTシャツという姿で繁華街を歩いていた。
今朝。
洗面所で由弦と鉢合わせしたとき、耳元に囁かれた言葉がふいに脳裏に蘇る。
『木葉、明日、誕生日だろ?』
『そうだけど』
『じゃあ何か、美味いもんでも食べに連れてってやるよ。たまにはいいだろ?』
由弦の言葉に木葉は息を飲んだ。
――――それではまるで、デートだ。
由弦はどんどん木葉との距離を縮めようとする。
由弦はもともと外食嫌いで、あまり外に食べに行こうとはしない。
そんな由弦がわざわざ誘ってくるということは、そういう意図なのだろう。
――――どんどん流されているような気がする。
木葉は歩きながら携帯を開いた。
昼頃に来た由弦からのメールを開く。
『6/XX 19:00 D・ダイナーズ』
D・ダイナーズは海沿いにある、カリフォルニア料理のレストランだ。
木葉は行ったことはないが、凛花曰く『カジュアルだけど、なかなかいい雰囲気のレストラン』らしい。