蜜色トライアングル ~String of origin
5.これが現実
「……こんにちは、木葉さん。お久しぶりですね」
「……」
「覚えてますか? 私、一之瀬遥です」
にこりと唇を歪めて遥は笑う。
木葉は何も言えず、立ち尽くしていた。
「知っているかどうか知りませんが。……今、私は由弦と付き合っています」
「……」
「……なのに……」
遥は髪を揺らして俯き、拳を握りしめた。
その手は怒りのせいかふるふると揺れている。
木葉はなすすべもなく遥を見つめていた。
「……一体どういうことなんですかっ!?」
「……っ……」
「あなたたちは姉弟でしょっ!? ……なんで、あんなっ……」
遥の激情はまっすぐ木葉の胸を貫く。
木葉は目を見開き、涙の滲んだ遥の目を見つめた。
――――由弦と、付き合っている……。
遥の言葉は木葉の胸に強い衝撃を与えた。
こんなに可愛い子が、由弦の彼女なのだ……。