蜜色トライアングル ~String of origin



「なんで何も言わない!?」

「……っ……」

「オレのこと、どう思ってる!? ……嫌いなのか? それとも……」


と、由弦が木葉の肩口に額を押しつけて呻いた時。

突然横から凄まじい衝撃を感じ、木葉は目を見開いた。


「……?」


何が起こったのかわからない。

恐る恐る身を起こすと、そこには予想だにしない光景が広がっていた。


壁に凭れ掛かっている由弦。

その足を膝で抑え込み、由弦の首元に腕を押し付けているのは……。


「お兄ちゃんっ!?」


部屋着姿の冬青が由弦の首に自分の腕を押し付けている。

その表情はいつものように冷静だが、瞳にはあまり見たことのない鋭さがある。

――――それは、一瞬だった。

まるで忍者が標的を暗殺する現場に居合わせたかのような光景に、木葉は青ざめた。


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