蜜色トライアングル ~String of origin
「……それにしても、あんたさ」
考え込む木葉に、凛花はストローでコーヒーの氷をつつきながら言う。
「由弦に何されても嫌って言えない、って……。それって普通じゃないわよ?」
「……?」
「フツーの、姉の弟に対する感情じゃない……ってことよ」
凛花の言葉に、木葉は目を見開いた。
凛花はコーヒーを飲み、続ける。
「例えばさ。ありえないことだけど……圭兄があたしに手を出したとするじゃない?」
「……」
「普通なら、最低っ! とか言って一発バシッて殴って終わりよ」
「……」
「生理的嫌悪感の方が強いからね。相手がどう思おうが、激しく拒絶するわよ」
凛花の言葉に、木葉は無言で固まっていた。
確かにそれが普通だろう。
しかし木葉は、由弦に対してそれができなかった。
――――どうしても。
それに由弦に対し、生理的嫌悪感を感じることもなかった。