蜜色トライアングル ~String of origin



「冬青は6歳だったから、最初からそのことは知っていた。だが由弦にそのことを告げたのは、中学を卒業する時だ」

「……」

「薄々感づいていたようではあったがな。お前への態度が変わったのも、たぶんその頃だ」


確かに由弦は高校に入ってから木葉に対する態度が変わった。

『お姉ちゃん』と呼んでいたのが、二人きりの時には『木葉』と呼ぶようになった。

その時には由弦は既に知っていたのだろう。

――――自分とは血の繋がりがないことを。


「ねえ、お父さん」

「ん?」

「由弦の本当の名前は、なんて言うの?」


結婚により正人の養子となっているのであれば、日本での正式な苗字は『山神』なのかもしれない。

しかし戸籍は香港で生まれた時に決まっているはずだ。


「香港の戸籍は、『李由弦』だ」

「……」

「向こう風に発音すると、『レイ・ヤウツィン』だな」


父の言葉に木葉は目を丸くした。

言葉に出すとまるで別人のようだ。

しかしそれを聞き、木葉は心のどこかで納得するのを感じていた。


自分と由弦の間に、血の繋がりはなかったのだ。


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