蜜色トライアングル ~String of origin
「わしと花枝で育てる手前、学校では『桐沢』の苗字を使っていたがな。パスポートは本名のはずだ」
「え、そうなの?」
「冬青も同じだがな。あいつの戸籍上の名は『李冬青』だ」
「……」
聞けば聞くほど、二人と兄弟だという感覚がなくなってくる。
木葉は由弦の白皙の顔を思い出した。
ずっと昔から慈しんだ、天使のような笑顔……。
「……お父さん」
「ん?」
「私ね、昔……由弦のこと、大好きだったの」
木葉の言葉に、父は驚いたように顔を上げた。
「ふわふわした髪とか、天使のような頬とか……。由弦の笑顔を見ると、いつでも守ってあげたいって、思ってた」
「……」
「でも今は……違うの。……私……由弦を……」
その先が、言葉にできない。
目尻に涙をためた木葉を、父親が優しい目で見る。