蜜色トライアングル ~String of origin
2.止められない嫉妬
「なんで、出ねぇんだ?」
由弦は忌々しげに携帯を閉じた。
――――花壱のカウンターの中。
22時を回り、上がる支度をしていた由弦は、木葉から全く連絡がないことに苛立ちを募らせていた。
今日は22時過ぎに帰るとメールしたのだが……。
いつもなら必ず、木葉から短いながらも返事があった。
この頃はあまり木葉と話していないが、必要な連絡はしなければならない。
そして由弦はその返事で、木葉が家にいることを確認していた。
……圭斗と一緒に居るわけではない。
そう安堵する自分がいた。
しかし、今日は……。
19時過ぎからメールすること5本、電話を掛けること3回。
けれどまだ木葉から返事はない。
「くそっ……」
あの時の二人の姿が脳裏に浮かぶ。
街灯の下で仲睦まじそうに話していた木葉と圭斗。
あの時の二人の姿を思い出すと、黒い嫉妬が胸に広がる。
――――諦めなければならないと、わかっている。
圭斗は大人だ。
しかも医者で、一人前の社会人だ。
学生の由弦とは全く違う。
木葉が惹かれるのも無理はない。
しかし……。