蜜色トライアングル ~String of origin



「聞いて」

「……」

「オレ、早く一人前の社会人になりたいんだ。兄貴や圭斗に嫉妬しなくても済むような、……木葉を自力で養える、一人前の社会人になりたいんだ」

「……っ……」

「でも日本ではダメだ。ここでは、オレ達は姉弟として見られてしまう」


由弦はそこで一旦言葉を止め、木葉を見た。

長い睫毛の下の美しい焦げ茶の瞳が、これまでにない真剣な表情で木葉を見つめている。


「……新しい土地に行けば、オレ達を姉弟だと思うヤツはいない」

「……由弦……」

「オレは先にあっちに行って、木葉と暮らしていくための準備をする。留学もその一環だ。だから……」


由弦は木葉の瞳をまっすぐに覗き込んだ。

――――木葉の視線を絡みとる、焦げ茶の瞳。


「オレが向こうで職についたら、木葉に来てほしい」

「……っ!」


由弦の言葉に木葉は目を見開いた。

その言葉の意味するところ、それは……。


――――プロポーズではないか?


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