蜜色トライアングル ~String of origin
次の年の冬。
木葉は正月の準備で、玄関や床の間にしめ縄飾りを飾っていた。
日本でお正月を過ごすのも、これが最後。
そう思うと、少しさみしい。
「木葉、角松はどうする?」
声をかけてきた兄に、木葉は振り向いて言った。
「玄関の両脇と……あとは道場の入り口かな?」
「わかった」
冬青は大きな門松を軽々と抱え、玄関の方に歩いていく。
冬青は相変わらず、桐沢道場で剣の指導をしている。
公認会計士の仕事も続けてはいるが、この頃は道場にいる時間の方が多い。
いずれはこの道場を継ぐのだろう。
というより、木葉も由弦もアメリカに行くため継ぐのは必然的に冬青しかいない。
「……」
兄の信者はあれからも増え続け、道場は今や男の園と化している。
兄の今後が気にはなるが、木葉が言ってもどうにもならないことだ。
父は冬青に道場を継ぐ必要はないと言ったらしいが、兄は継ぐことを選んだ。
――――兄が選んだ道だ。
兄が決めたことを、木葉も尊重したいと思う。